次に考えるべきことは、薪ストーブの機種だ。施主さんは、バリバリ調理に活用したいからということでオーブン付きのモデルを検討されていた。オーブン室がないモデルでも工夫と努力次第でたいていの料理はできるけど、オーブン室がついていれば、パン、ケーキ、クッキーなどの繊細かつ微妙な熱の加え方が必要な料理も、比較的簡単かつ便利にできる。何よりも、炉内の熾火の状態を素材に合わせてコントロールする必要がない。薪をガンガン焚いていてもオーブン室でたいていの料理が作れてしまうメリットは大きい。
市販品で、よくあるのは、かわはら薪ストーブ本舗でも取り扱っている輸入品でオーストラリア製のピキャン(大、小)の2モデルのラインナップ、イタリア製のドミノ(大、小)の2モデルのラインナップだ。これらの製品は火室が上でオーブン室が下という設計のため、どうしても排気経路の切り替えのダンパーユニットが本体に内蔵される構造になっている。普通の薪ストーブの考え方で天板を高温にしようとすると、そうなってしまうのも無理はないが、このダンパーユニットが曲者で、正直操作が面倒だし、操作する際の感触が気持ち良いとは言えない。
国産では、中小の工房で作られている、いくつかオーブン付きのユニークなクッキングストーブがある。横型の大型のごっついモデルから、小さな、かわいいものまで様々だ。これらはあまり多く出回っているわけではないので、ネット上での情報が少ない。

今回のリフォーム中の「古民家に合う国産で、なおかつ小型モデル」ということで、施主さんが見つけてきたのが信州のエイトノットというモデルだ。これは大、(大、中、小)と3モデルラインナップされていて、さらにグレードも2タイプ合計6種類と選択の幅が広く、ニーズに合わせたモデルが得られる。扉の開閉方向や足の高さも現場に合わせて、オーダーメードで作ってくれる。
しかし、正直、現物を見ないと良いのか悪いのかも評価できない。そこで、この春分の三連休の中日に、施主さんと一緒に長野県松本市のエイトノットの工房まで見学に行った。

敢えて、事前に火が入ってない状態で焚付けから見学させてもらった
そのことで立ち上がりの様子が観察できる。訪問時に薪ストーブが温まっていて、熾火がある状態だと、燃焼能力や立ち上がりを正しく判断できない。また、火が入っていない状態で扉の開閉や、空気調整のレバーの質感や、内部の構造などもチェックできる。

炉の前面からの一次空気の吹き出し口があるので、700SLのような強力な立ち上がりが予想できる

予想通り、スムーズな立ち上がりだった

オーブン室の温度上昇も早く実用的で、見学の間に焼きリンゴが完成
日本人ならではの配慮で細部までこだわって作られていて、性能、耐久性、デザイン性、なかなか良い設計の薪ストーブだと思った。これだったら、私が施工する現場に導入しても問題ないと思った。
「オーブン室が上だから、天板の温度が上がらないのでは?」と見学前には思っていたけど、オーブン室の左右に設定したヒートライザー経由でロケットストーブとして炎が舞い上がるので、しっかり天板でもボコボコとヤカンのお湯が沸騰する能力を発揮していた。私も先日、プロトタイプでオーブン付きのロケットストーブを作成したが、それと通じる設計だった。
